干し芋作りの始まりは、2〜5月にかけて行う畑作りから。
まずは土に肥料を与え、トラクターで土を粉々に砕いて畑ならし。それから、サツマイモの苗を植えるためのかまぼこ型の畝を作っていきます。
3月は苗床作りです。
ハウスの中に種芋を並べ、30℃前後に保った苗床で発芽させます。
5月頃、葉の数が6〜8枚になったところを見計らって、苗を切り取ります。
そうしていよいよ、苗を畑の畝に植え付けます。
雑草を除草したり、防虫作業をしたり。
まるで子どもの成長をこっそり手助けしながら見守るように、収穫まで健康な芋の成長をサポートしていきます。
毎年10月初旬から11月初旬くらいに行う芋掘りは、ひたちなか地域ならでの風物詩でもあります。
ちなみにひたちなか地域で多く作られている干し芋の原料品種の一つ「玉豊(たまゆたか)種」は、皮が白いのが特徴。
真っ白い芋を見て、驚かれることもあります。
基本的には、収穫してすぐに製造工程に入ることはありません。実は収穫してすぐのものは、甘みが少なくパサパサした食感になってしまうのです。
そこで重要なのが「熟成」。甘みや独特の食感を引き出すため、収穫した芋を定温の保管庫の中で眠らせるのです。
少なくとも1ヶ月以上の熟成期間を経て、たっぷりおいしさを蓄えてもらいます。
冬。熟成を終えたら、やっと干し芋製造がスタートです。
まず初めに行うのが「選別」。
熟成中に腐敗してしまったものなどを手作業で一つひとつ取り除き、大きさ別に選別していきます。基本的には「大=角切り」「中=平切り」「小=丸干し」のように使い分けています。
選別が終わったものは、水でよく洗浄して、土などをきれいに取り除きます。
よく洗った芋は専用の蒸かし機の中で、蒸かしていきます(90~120分間)。
ここでのポイントは、弱い圧力でじっくりゆっくり蒸かすこと。
強い圧力で短時間で蒸かすと、芯まで蒸かしきれず「白太」という状態になってしまうのです。干し芋作りにせっかちは禁物です。
皮剥きは、蒸かしたての熱いうちに一本一本手作業で行います。
干し芋作りのなかでも最も手間と時間のかかる工程ですが、熟練の農家さんは1本数十秒ほどで、するりと綺麗に剥いてしまいます。
実は、あまり大きな声では言えませんが、蒸かして皮を剥いただけでも、かなり「おいしい」です。この状態での食感は、たとえるなら「ホクホクシットリ」という感じでしょうか。
皮を剥いた芋は、幅約1cm間隔でピアノ線をピンと張った専用の裁断機で裁断していきます。形を崩さないように、縦方向にやさしくすーっと押し込むのがポイントです。
サツマイモには食物繊維がたっぷり含まれていますが、繊維に逆らって裁断すると形が無残なほどに崩れてしまいます。
簡単そうに見えて非常に技術が必要な工程。干し芋のきれいな形は、熟練の技なのです。
裁断し終えたらすぐ、簾(すだれ)の上に一枚ずつ丁寧に並べていきます。
こちらもかなり神経を使う工程。
しっとり繊細な芋たちは、気を抜いた瞬間に容赦なく型崩れしてしまいます。
天気予報とにらめっこし、晴れの日が続きそうな時を見計らって。
さあ、天日干しの始まりです。
天候等にもよりますが、平均で平切り干し芋が約7日間、丸干し芋はその倍の約14日間程度かけて仕上げていきます。
さらに、ただ干しておくだけでなく、雨が降れば軒下に移したり、全体が満遍なく乾燥するよう一枚一枚ひっくり返したり。手がかかるほど愛おしい、そんな干し芋作りです。
夜に冷えた芋が、昼間の太陽で急激に温められることによって、まるで芋が呼吸をするかのように、水分が表面に浮き出てくる。
それを繰り返すことで、美しくしまった干し芋ができあがります。
良質なサツマイモを育てるこの土地ならではの火山灰土の黒い土、そしておいしい干し芋を作る冬に晴天が続く気候と、太平洋からの海風。
自然の力と、人間の技と根気で作り上げる。
それが私たちマルヒの干し芋なのです。
昔ながらの天日干しで、一枚一枚手作りで作り上げるマルヒの干し芋。
自然の力と人の手で作る干し芋作りは、時間も手間もかかりますが、この地で受け継がれてきた本当のおいしさを守り、伝えたくて、約200軒の地域の提携農家さんとともに、無骨に手作りを貫いています。
そんな私たちの干し芋作りの一年をご紹介します。